大相撲・令和元年九月場所の感想
昨日は大相撲・令和元年九月場所の千秋楽でした。
優勝は東関脇・御嶽海。
2018年七月場所に続き、2度目の幕内最高優勝です。
白鵬・鶴竜の両横綱と大関・高安の休場した場所で12勝3敗は、少し物足りない気もしますが。
しかし、この「物足りなさ」も、今後大関、横綱と昇進していってもらいたい御嶽海への期待の裏返しです。
次場所12勝すれば、大関昇進の目安である「3場所連続三役(小結・関脇)で33勝」はクリアするわけですが、どうでしょうか。
16場所連続で三役の地位を守っているわけで、成績の安定度は抜群ではあるのですが、その成績のほとんどが9勝6敗、8勝7敗、7勝8敗で占められているのも気になるところです。
大関、横綱として駆け上がっていく力士としての勢いがあまり感じられないんですよね。
力の衰えた大関が、カド番を繰り返しながら地位を守っている状態と同じような感じです。
安芸乃島や若の里のように、「強い関脇」で終わってしまうのは残念です。
何と言っても、江戸時代の強豪大関・雷電以来の長野県出身の大関になれるか、という存在ですからね。
この優勝で勢いをつけて、より上を目指してほしいものです。
その御嶽海と優勝決定戦を争ったのが、大関から陥落して西関脇を務めた貴景勝。
10勝で大関復帰を見事決め、さらに優勝争いまでできるのですから、大関陥落は怪我の影響であって、実力は確かなものと証明してくれました。
……のですが、その優勝決定戦で左胸の付近の筋肉を負傷した、とのこと。
左大胸筋の負傷と言えば、元横綱・稀勢の里の荒磯親方も現役時代に苦しめられ、実質この怪我で引退に追い込まれたようなもの。
せっかくの大関復帰の場所で、また今後に暗雲立ち込める状態に……。
怪我の程度にもよりますが、来場所は無理せず休み、一月場所で完全復活を目指した方が良いかもしれません。
無理は力士寿命を縮めるだけですから……。
東大関・栃ノ心はカド番場所、6勝9敗で負け越し、2度目の大関陥落が決定。
来場所関脇で10勝すれば大関復帰ですが、今場所の様子を見ると少し厳しいかも……。
他に注目した力士は、やはり西前頭十一枚目・炎鵬ですかね。
168cmの身長は、2メートル近い他の力士と並ぶとまさに大人と子供状態。
身体の大きな力士が圧倒的に有利な相撲という競技で、堂々と勝ち越しを決めるのですから、大したものです。
日本人は体の小さな力士が大きな力士を倒す「小よく大を制す」の世界が好きだ、というのは、炎鵬が会場で一番の声援を集めていることからもわかります。
今後も頑張ってほしい力士の一人ですが、やはり怪我だけが心配です。
身体が小さいので、頭を下げて相手の胸元に潜り込んでいく形によくなるのですが、上からの圧力で頸椎を痛めるのではないか、と心配になります。
大きな相手に対して正面から立ち向かえば、こういう体勢になるのも仕方がないのですが。
個人的に今場所で一番面白かったのは、六日目(13日)の朝乃山と豪栄道の取組で、行事の木村玉治郎が土俵から消えてしまったこと。
動き回っているうちに足をもつれさせ、すごい勢いで土俵を横断してそのまま土俵下に転落してしまったのです。
力士に巻き込まれて土俵下に……というパターンは時々見られますが、行事が一人でつまずいて、というパターンは珍しいです。
結局、玉治郎が土俵上に戻る前に勝負はついたのですが、すぐに近くの審判親方に勝敗を確認して、軍配を勝った朝乃山に上げながら土俵上に戻ってきたのにはプロの根性を見せてもらいました。
あと、行事が落ちてくるというまさかのハプニングにも動じず、水桶を持って回避した呼び出しさんにも。
こんな感じでいろいろと見どころがあった九月場所でした。
またしばらく相撲はお預けかと思うと寂しいですが、十一月場所の楽しみにしています。