今年の秋刀魚は高級品かも……でも食べずにはいられない
昨日、近所の焼き鳥屋にて。
カウンターに座って「黒ホッピー?」「お願いします」のいつもの流れを済ませた後、メニューを見ますと。
「秋刀魚、ようやく入荷しました!」
この文字が目に飛び込んできました。
「そう言えば、秋刀魚出すのいつもより遅かったですね」
「今年は全然取れないらしくてね。ウチみたいな店で出すには、高すぎたんだよ」
魚介メインの店ならまだしも、基本的に焼き鳥屋だから高い秋刀魚は出しづらい、とのこと。
気になってちょっと調べてみたところ、今年は秋刀魚の水揚げ量が例年の一割程度、とのことでした。
それは高くなってしまうはずです。
秋刀魚の塩焼きが680円。
おつまみは高くても500円くらいのこの焼き鳥屋の中では、最高級品です。
まあ、秋刀魚の塩焼きは大好物ですし、今年初の秋刀魚。
ここはちょっと高くても食べておくべきでしょう。
江戸っ子は、女房を質に入れてでも初鰹を食べたという話ですしね。
私は江戸っ子ではないですし、鰹ではなくて秋刀魚ですが。
しばらくして届いた、炭火で焼かれた秋刀魚の塩焼き。
ちょっと焦げた皮から、ジュウジュウと音を立てて脂が滲み出て……もう、見た目からして美味しいことは間違いありません。
早速お腹に箸を入れて、一番好きなワタの部分をパクリ。
美味しいです。
ワタのほろ苦味と秋刀魚の旨味が口いっぱいに広がります。
細かい腹骨が一緒に口に入ってきますが、そんなものをチマチマと除けるのも馬鹿馬鹿しい。
骨はよく噛めばいいのです。
ワタは熱々が美味しいですから、しばらくは黒ホッピーもそこそこに、一心不乱に箸を口に運びます。
ちょっとお皿に残ったワタは、軽く醤油をかけた大根おろしを絡めて残さずいただきます。
フランス料理でお皿に残ったソースをパンで残さずいただくのと同じです。
塩味でも十分美味しいですが、醤油が加わるとさらに美味しさアップ。
大根おろしで口の中もさっぱりとして、たまりません。
しかし、子供の頃はワタなんて「苦いし気持ち悪いし、大嫌い!」でしたが、大人になると大好物になるのですから、不思議なものですね。
ワタを堪能した後、身の方に取り掛かります。
ワタと身を一緒に食べるのも美味しいですが、私は別々に味わう派ですね。
そんな派閥があるのかは知りませんが。
食べる前は「うーん、ワタに比べると身の方はちょっとな……いや、嫌いじゃないけどさ」とか思っているのですが、実際に食べるとやっぱり美味しいものです。
パリパリの皮とホクホク白身、そして噛むと溢れるたっぷりの脂と肉汁……たまりません。
背びれとか尻びれとか小骨とか、細かいことは気にしません。
とにかくよく噛めばいいのです。
お皿に残ったのは、頭と背骨と尻尾だけ。
しかし、まだ秋刀魚の楽しみは終わっていません。
焼き場で焼き鳥を相手にしている店長に、ちょっと余裕があるかな、というタイミングで声を掛けます。
「店長、骨焼いてもらえます?」
「はーい、お皿貸して!……相変わらず綺麗に食べますね!」
褒めてもらえました。
魚を綺麗に食べるのは、私の得意技です。
しばらく待つと、出てくるのはカリカリに焼かれた秋刀魚の背骨。
鯵や鰻の骨せんべいの、秋刀魚炭火焼きバージョンです。
醤油をちょろっと垂らして、ポリポリと。
香ばしくて、歯ごたえがあって……まあ、味は「よく噛むと染み出てくる」くらいなので、飛び上がるほど美味いもの、というわけではありませんが、「秋刀魚を食べ尽くした!」という感じがして大満足です。
……この食べ方は、このお店で以前秋刀魚を食べた時に「骨、焼きます?」という店長の一言で知ったものです。
だから私も遠慮せずに頼めるんですが、他のお店だとどうなんでしょうか。
「面倒くさい客」とか思われそうで、他のお店で頼んだことはないんですが。
しかし、昔は「庶民の味」だった秋刀魚も、この調子だと高級魚になってしまいそうですね。
手が出せるうちに、たくさん食べておきますか。
今回は塩焼きでしたが、刺身も美味しいですから、見かけたら注文したいと思います。