チレの串焼きが食べたくてたまらない
私がよく居酒屋、特に焼き鳥屋に行くことは今までも書いてきました。
ちなみに串は正肉よりも、砂肝やレバー、タンやハツといった、ホルモン系が好みです。
タンやハツは豚のことが多いので正確には焼き鳥ではなく焼きトンなのですが、細かいことは気にしません。
中でも好きなネタがありまして。
それが「チレ」であります。
「チレ」とはどこの部位かを説明しますと、牛の脾臓です。
鳥や豚どころではなく、牛まで登場しましてきましたが、もう面倒なのですべて焼き鳥で。
もちろん牛以外の動物にも脾臓は存在しますが、食用にされるのは牛が多い、ということのようですね。
そもそも脾臓というのがどういった役割を果たす臓器なのか知らなかったので調べてみたのですが、どうも「老化した赤血球を破壊し、除去する」役割を持っているようです。
いまいちイメージしにくいですが、美味しければそれでいいかな、と。
このチレ、味や食感としてはレバーに近いものがあります。
どちらかと言うとレバーよりフワッとした、柔らかさがあるでしょうか。
そして臭みはほとんどありません。
と言うのも、チレは新鮮さが一番のポイントであるためだと思われます。
しかし新鮮さが一番重要ということは、あまり日持ちしない、ということでもあります。
そのためか、私が訪れた焼き鳥屋でも、置いてある店はあまりありませんでした。
時々入荷して日替わりメニューとして出ているのを見掛けるくらい。
常設メニューとして記載してあって、喜んで頼んでみたら「すみません、今日は入荷してないんですよ」と言われてがっかりすることも。
ただ、だからと言って「そんなに美味しいのか!」と問われれば、「いや、それほどでも……」という感想だったりします。
自分でも、なぜこんなにチレが好きなのかわからないのですよね。
不思議な食べ物です。
ともかく、私はチレがあったら注文する人間なのですが、一番美味しいと思ったのは、初めて食べたときでしたね。
府中の駅前にあった老舗の焼き鳥屋だったのですが、ただチレを焼いただけではありません。
その店は大きめにカットしたチレに、豚の網脂を巻いてタレで焼く、というひと手間をかけていました。
チレ自体はあっさりした味、悪く言えばタレの美味しさがないと少々物足りなさを感じたりもするのですが、豚の網脂を巻くことで脂の美味しさが加わって、とても満足できる味だったのです。
店長に「仕込み、面倒くさくないですか?」と聞いたら「面倒だけど、こうした方が美味しいから」と当然のように答えてくれたのが印象に残っています。
研究熱心な店長で、通い続けているうちに「これ明日のお通しにしようと思ってるんだけど、どうかな?」と小鉢を出してくれることもありました。
「美味しいっす」というときもあれば「……微妙っすね」というときもあり、それがまた面白かったですね。
一番微妙だったのは「おからにオレンジジュースを混ぜて寒天で煮凝り風に固めてみた」という不思議な物体でした。
食べた瞬間の私の顔を見て「やっぱり思い付きだけじゃダメだねぇ」と笑っていたのが思い出されます。
そんなお店も駅前の再開発でなくなってしまい、店長も「もう歳だから」と引退してしまったのですが……。
時代の流れですから仕方がない、と思いはしますが、なんとも残念でした。
私がいまだにチレを好むのは、そのお店での楽しかった思い出を忘れられないためかもしれません。
チレについていろいろと調べてみたところ、どうも串焼きだけでなく、刺身で食べられる、というお店もあるようです。
チレ好きとしては一度は食べてみたいと思いますが、やっぱり食べるなら串焼きにしてもらった方が嬉しいですかね。
もう一度、チレの網脂巻きを食べてみたいものですが……思い出は思い出のままにしておくのが一番いいのかもしれません。
いざ食べてみて「あれ、こんなもんだったっけ?」と思ってしまうのも、ちょっと寂しいものですので。